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団体保険は、
給与の一部です

聞き慣れない制度ですが、法律上の位置づけと、労災との関係を整理してみると、見え方が変わりました。自分の理解をまとめたものです。

団体保険について、自分の理解を整理してみました。書いてみて、腑に落ちたことが三つあります。

  • 会社のお金の、いちばん大きな塊に関わる制度であること
  • 法律上の位置づけが、他の保険とはっきり違うこと
  • 福利厚生と、リスクへの備えが、同じ一つの契約で満たされること

順に書きます。商品のご案内はしません。

01会社のお金の、いちばん大きな塊の話

損益計算書でいちばん大きな費目は、多くの会社で人件費です。先生方が毎月ご覧になっている数字のなかで、最も重い塊です。

ところがその人件費は、「毎月の現金」としてしか語られないことが多いように思います。給与を上げるか、上げないか。経営者に見えている選択肢が二つしかない状態です。

団体保険は、その塊のなかにもう一つの形を持ち込む制度です。

02法律上は「他人の生命の保険契約」

この制度でいちばん興味深いのは、ここだと思っています。

団体保険では、契約者が会社、被保険者が社員になります。つまり会社が、自分ではない誰かの生命に保険をかけている。法律の言葉では「他人の生命の保険契約」に当たります。

生命保険契約では、被保険者が契約者以外である場合、被保険者の同意がなければ契約は効力を生じません。だから団体保険には、会社が制度をつくり、社員に通知し、同意を得るという手続きが組み込まれています。一括告知・通知同意方式と呼ばれる仕組みです。

要確認 被保険者の同意に関する規律は保険法に定めがあります。条文番号および適用範囲は、公表されている法令原文をご確認ください。
同意を必要とする制度は、
社員の側に立っています。

ここが効いてきます。団体保険は会社が契約しますが、法律の構造上、社員の同意なしには成立しない。会社の資産ではなく、社員に向けて用意されたものだという性格が、法律の側から裏づけられています。

03社員から見れば、報酬の一部

社員一人の生活を支えているのは、三つの層の組み合わせです。

個人保険社員が、自分の判断で備える層
団体保険会社にしか用意できない層
社会保険国が、すべての人に一律で用意する土台

団体保険は社会保険と個人保険の中間に位置することから、「第二の社会保障」と呼ばれることがあります(出典:生命保険講座 団体保険テキスト)。

給与は、働いている間しか出ません。社員が働けなくなった瞬間に、いちばん大きな報酬は止まります。

団体保険は、その瞬間に立ち上がる報酬です。だから「福利厚生のおまけ」ではなく、報酬の一形態として考えたほうが実態に合うと思っています。金額の話ではなく、報酬に現金以外の形があるという話です。

04労災には「認定」という関門がある

ここは、整理していていちばん考えさせられた部分です。

労災保険は、業務上および通勤上の災害に対して給付されます。ただし給付を受けるには認定が必要です。

認定を通れば、給付される。
通らなければ、何も出ない。
そして通るかどうかは、事前には分からない。

私自身、調べ直すまで曖昧に理解していたのですが、認定されにくいという話ではありません。過労死(脳・心臓疾患)には認定基準が整備されており、認定される例は多くあります。熱中症も、業務に起因するものであれば対象です。帰宅途中の寄り道も、日用品の購入など日常生活上必要な行為で合理的な経路に復した後であれば、通勤災害と認められる場合があります。

つまりこれらは「対象外」ではなく、個別に判断される領域です。だからこそ、事前には見通せません。

01死亡したとき
原因・状況労災保険政府労災傷害保険業務外も対象とする契約死亡保険定期保険など
業務・通勤が原因の事故・ケガ対象※1対象※2対象※2
業務が原因と認められる病気(疾病)対象※1原則対象外対象※2
私生活での事故・ケガ対象外対象※2対象※2
業務に起因しない病気(疾病)対象外原則対象外対象※2
02入院・手術を受けたとき
原因・状況労災保険政府労災傷害保険業務外も対象とする契約医療保険病気・ケガを対象とする契約
業務・通勤が原因の事故・ケガ対象※1対象※2対象※2
業務が原因と認められる病気(疾病)対象※1原則対象外対象※2
私生活での事故・ケガ対象外対象※2対象※2
業務に起因しない病気(疾病)対象外原則対象外対象※2

※1 労災保険の認定・支給要件を満たす場合。入院・手術時は、必要な療養に対する給付です。
※2 該当する死亡・入院・手術の保障があり、契約所定の支払要件を満たす場合。免責事由、対象となる手術、支払日数・回数の上限等は、商品・契約により異なります。自殺による死亡については一定期間の免責が置かれるのが一般的ですが、その期間は商品により異なります。
傷害保険は、原則として「急激・偶然・外来の事故」によるケガが対象です。疾病を補償する特約などを付けた場合は、対象範囲が変わります。医療保険は生命保険会社・損害保険会社の双方で取り扱われています。
各欄は一般的な保障の整理です。公的医療保険は比較に含みません。給付額・保険料等を含めた総合的な優劣を示すものではありません。 参考:厚生労働省「労災保険制度」/日本損害保険協会「傷害保険」「医療・介護保険」/生命保険文化センター「定期保険」

表の右端の列は、業務に起因するかどうかを問いません。認定という関門がない。これが構造上のいちばん大きな違いです。

そして団体保険は、この右端の列を会社が制度として用意するための仕組みです。

05会社に残るのは、法的責任だけではない

社員に万一のことがあったとき、会社には労働契約法第5条の安全配慮義務や、労働安全衛生法上の措置義務といった論点が生じ得ます。

ただ実務では、法的責任の有無が争点になる、その前の段階があります。会社として何を出せたか。どう向き合えたか。そこで用意されていたものが、その後の経緯を変えることがあります。

弔慰金規程があり、財源もある。この状態をつくっておくことは、社員と遺族のための備えであると同時に、争いそのものを防ぐための備えでもあります。

06福利厚生とリスクマネジメントは、表裏一体

ここまでを整理します。

社員から見ると報酬給与が止まった瞬間に立ち上がる、現金以外の形の報酬
会社から見るとリスクへの備え認定の有無を問わず、会社として出せるものを持っておく
制度としてはひとつの契約同じ一つの仕組みが、両方を同時に満たす

福利厚生とリスクマネジメントは、本来切り離せないものだと思います。社員を守る仕組みは、そのまま会社を守る仕組みになる。団体保険は、それを一つの制度で実現できる、数少ない手段だと考えています。

07税務上の扱いは、先生方の領域です

ここは私が断定すべきところではありません。

支払保険料の取り扱いは、契約形態・保険金受取人・対象者の範囲によって変わります。対象を限定した場合と全員を対象とした場合でも扱いが異なります。一般に参照されるのは法人税基本通達ですが、個別の判断は顧問税理士の領域です。

要確認 実際の適用にあたっては、国税庁が公表する法人税基本通達および最新の取扱いをご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務判断を示すものではありません。

むしろ、こちらから伺いたいことがあります。

  • 顧問先で、弔慰金規程を持っている会社はどれくらいの割合でしょうか
  • 規程はあっても財源が用意されていない、というケースをどの程度ご覧になってきましたか
  • 保険料の取り扱いについて、実務ではどこを注意して見ていらっしゃいますか

実際の設計について、
ご意見を伺えないでしょうか

制度の設計は、対象者の構成や既存の契約によって変わるため、一般論では語れません。 実際の設計例をお持ちしますので、税務と実務の両方の観点から、率直なご意見をいただけると助かります。

相談の前に、話を聞いてみる
本記事は団体保険に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品の推奨や勧誘を目的とするものではありません。 保障の内容、加入資格、引受の条件、免責事由および保険料は、保険会社および制度の設計により異なります。 税務上の取り扱いについては、契約形態等により異なるため、国税庁の公表内容および顧問税理士のご判断をご確認ください。 個別のご案内は、関係法令および所属先の規程に基づいて行います。